新レコードクリーニング法(その1)

レコードクリーニングとは何か

――「拭く」ことではなく、「音楽を蘇らせる」こと

「レコードクリーニング」と聞いて、皆さんは何を思い浮かべるであろうか?
おそらく多くの方は、再生前にレコード表面のホコリをブラシで払う、あるいはクロスで軽く拭く――その程度の行為を想像されるかと思う。

しかし、私は長年レコードショップを営み、毎年数千枚単位のLPを実際に扱ってきた経験から、断言する。
それだけでは、レコードはほとんど「きれい」にはなってはいない。

もちろん、目に見えるホコリを取り除くこと自体は無意味ではない。再生時のノイズ防止や、針先の保護という意味では一定の効果あるであろう。ただしそれは、あくまで「気分的な安心」に近いもので、音そのものを大きく改善する効果は、正直に言ってほとんど期待できない。

では、私が考える「レコードクリーニング」とは何か。

それは、
LP表面、そして溝の奥深くにはじめから、あるいは長年蓄積された不純物を徹底的に取り除き、レコード本来の情報を再び引き出すこと
にほかならない。

LPレコードには、数十年という時間が刻み込まれています。前の所有者の再生環境、保管状態、室内の空気、煙草のヤニ、皮脂、洗剤成分、カビ、そして目には見えない微細な粉塵など――そうしたものが、溝の中に層をなして残っている。
これらは、単に表面を拭いただけでは決して除去できないのだ。

そして重要なのは、これらの不純物が確実に音を劣化させているという事実。
音の立ち上がりが鈍くなる、弱音の表情が失われる、響きが濁る、定位が甘くなる。こうした変化は、決してオーディオ的な誇張ではなく、適切なクリーニングを行った後には誰でもはっきりと認識できるものだ。

私はこれまで、
「このレコード、こんな音だったのか」
「買ったときとは別物ですね」
という言葉を、何度もお客様から聞いてき。クリーニング後の音の変化は、時に演奏の評価そのものの印象すら変えてしまうほどなのだ。

つまり、レコードクリーニングとは単なるメンテナンス作業ではない。
音楽体験そのものを、より深く、より感動的なものへと導く行為なのだ。

このブログでは、そうした視点からレコードクリーニングについて、私の見解を数回に分けて詳しく書いていきたい。
クリーニングによって実際に何が変わるのか。
なぜ「正しい方法」と「そうでない方法」とで結果に大きな差が出るのか。
どのような道具が有効で、何に注意すべきなのか。

長年、商品として、そして音楽としてレコードと向き合ってきた立場から、理屈だけでなく実体験に基づいてお話ししていきたい。

レコードを「ただ鳴らす」のではなく、
音楽をより深く味わうために。
その第一歩としての「レコードクリーニング」について、ぜひお付き合いいただければ幸いです。

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