レコードというメディアを長年扱っていると、「音楽そのもの」だけでなく、「その音楽をどういう状態で聴くか」がいかに重要かを、嫌というほど思い知らされる。
私にとってレコードクリーニングは、単なる下準備ではなく、レコードと向き合うための最初の、そして最も重要な作業なのだ。(「儀式」といってもいいだろう)
キース・モンクスとの長い付き合い
前述のとおり、長年にわたり、私はキース・モンクス(KM)のレコードクリーニングマシンを使い続けてきた。
吸引糸を使った独特の構造、必要最小限で確実な洗浄、そして何より「音が変わらない」こと。
業務用として、これ以上信頼できるマシンはない――そう確信して、ほとんど疑うことなく使い続けてきたのだ。
40年ほど前には、秋葉原の石丸電気のレコード売り場に、このマシンが設置されていた。
1回100円で誰でも使えるその光景を覚えている方も、少なくないと思う。
当時からキース・モンクスは、「特別な機械」ではなく、「レコードを大切に扱うための道具」として、静かに受け入れられていた。
しかし、どんなに優れた機械でも、時間には逆らえない。
設計自体が古く、消耗部品の入手、モーターやポンプの劣化、日常的なメンテナンスの負担は、年々重くのしかかってきた。
数回修理はしていたけれど・・・・
「まだ使える」けれど、「このまま使い続けてよいのか」――
そんな現実的な問題を意識し始めたのが、今から10年ほど前のことだ。
クリーンメイトとの出会い

ちょうどその頃、国産のレコードクリーニングマシン「クリーンメイト」が登場することになる。
私がこのマシンの存在を知ったのは、「アナログ」の記事だった。
派手な宣伝ではなく、新しい国産マシンが出てきた、という比較的控えめな紹介だったと思う。
しかし、長年KM使ってきた身としては、その記事を見逃すことはできなかった。
記事を読んで間もなく、私は実際にメーカーを訪ね、マシンを前にして話を聞き、そして自分の目と耳で効果を確かめることに。
レコードを扱う仕事をしている以上、「評判」や「理屈」だけで判断するわけにはいかないからだ。
第一印象 ― 国産らしい合理性
実際にクリーンメイト(第一世代)を見て、まず感じたのは、いかにも国産機らしくコンパクトにまとまっているという点。
設置性や取り回しを強く意識した設計で、無駄ないと感じた。
吸引方式はキース・モンクスとは若干異なっており、そのため吸引時のノイズはやや大きめ。
ただしその分、クリーニングに要する時間は非常に短く、作業効率の高さは明確な長所だと思った。
大量のレコードを日常的に扱う立場からすると、この点は決して小さくないからだ。

吸引ノズル

吸引中の様子
さて、肝心の洗浄結果だが、洗い上がったレコードは、KMと比べても汚れ落ちという点ではまったく遜色がなかった。
再生音の傾向としては、KMに比べるとわずかに明るい印象を受けた。
ただしこれは音楽の表情を壊すような変化ではなく、あくまでキャラクターの違いといえる範囲だった。

洗浄前

洗浄後
価格という現実
そして、もうひとつ強く印象に残ったのが価格である。
旧型とはいえ、KMと比較すると、クリーンメイトは明らかに安い。
業務用として複数台の導入や、長期的な運用を考えたとき、この差は決して無視できない。
第一世代のKMは、いまもなお基準となる優れたマシンである。
しかし同時に、時代や環境が変わる中で、「現実的に使い続けられるかどうか」という視点も必要になってきた。
クリーンメイトは、その意味で単なる代替機ではなく、「次の時代の選択肢」として、私の中に確かな存在感を持って立ち現れてきたのだった。

クラシックレコード専門店・(株)ベーレンプラッテ 代表取締役
1961年新潟生まれ。
10代からクラシック音楽やオーディオをこよなく愛し、大学・大学院では建築音響を専攻(工学修士)。修了後は、ホールやオーディオルームなどの設計・施工などに従事。2002年からは、輸入クラシックレコード専門店であるベーレンプラッテを立ち上げ現在に至る。
年数十日はヨーロッパ(オーストリアやドイツなど)で過ごし、レコード買い付けや各地のコンサートホールやオペラハウスを奔走する毎日を送っている。
アナログ(音元出版)や放送技術(兼六館出版)などの雑誌にも多数寄稿。
クラシックレコードの世界(ミュージックバード)などの番組でも活躍。
五味康祐のオーディオで聴くレコードコンサート(練馬区文化振興協会)講師。
ウィーン楽友協会会員
ベーレンプラッテ
店主やスタッフたちが、直接ヨーロッパで買い付けをした良質なクラシックレコードのみ扱う専門店。
また、店舗でも使用している店主たちが厳選したレコードケア用品(クリーニングマシンやオリジナル内袋など)も販売中。
<公式SNS>
Facebook:ベーレンプラッテ
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