「信頼して身をゆだねられる」大家の名演
先日、久しぶりにこのLPを通して聴いた。
ピエール・モントゥー指揮、ロンドン交響楽団による、シベリウス/交響曲第2番。

改めて思ったのは、これは「感動を煽る」演奏ではなく、「信頼して身を委ねられる」演奏だということ。
まず聴き始めて感じるのは、驚くほどの安定感。
いわゆる絶叫や、感情を前に押し出すような表情付けはほとんどない。テンポは自然で、呼吸は大きく、どの楽章も無理なく次へと進んでいく、にもかかわらず、音楽の骨格は微動だにせず、全曲を通して揺るぎない構築感が保たれている。
第1楽章では、弦の刻みがきわめて均質で、音楽が地面をしっかりと踏みしめて進んでいく感触がある。第2楽章でも、低弦と管の重心は常に低く、暗さや緊張感を誇張することなく、静かな持続として音楽が流れる。そして終楽章。ここでありがちな「勝利の咆哮」はなく、音楽はあくまで自然な歩幅のまま、気がつくと頂点に到達している。
この抑制の効いた昂揚こそ、モントゥーの美学なのだろう。
そして、この演奏の魅力を決定的なものにしているのが録音だ。
細部を強調したり、特定の楽器を浮き立たせたりすることは全くない。音像は終始安定し、オーケストラ全体が一つの塊として、しっかりと捉えられている。フォルテでも音が前に飛び出すことはなく、響きは横に、そして奥へと広がる。そのため、聴き手は個々の音ではなく、音楽全体の流れと構造に自然と耳を傾けることになる。
派手さは全くない。
しかし、長く付き合える一枚だと感じた。気持ちを高ぶらせるのではなく、静かに整えてくれるシベリウス。
演奏と録音が同じ方向を向いたときに生まれる、理想的なLPの一例と言えよう。
ありがとう!
シベリウス/交響曲第2番
ピエール・モントゥー(指揮)
ロンドン交響楽団
(1958年・キングズウェイホールで録音)

クラシックレコード専門店・(株)ベーレンプラッテ 代表取締役
1961年新潟生まれ。
10代からクラシック音楽やオーディオをこよなく愛し、大学・大学院では建築音響を専攻(工学修士)。修了後は、ホールやオーディオルームなどの設計・施工などに従事。2002年からは、輸入クラシックレコード専門店であるベーレンプラッテを立ち上げ現在に至る。
年数十日はヨーロッパ(オーストリアやドイツなど)で過ごし、レコード買い付けや各地のコンサートホールやオペラハウスを奔走する毎日を送っている。
アナログ(音元出版)や放送技術(兼六館出版)などの雑誌にも多数寄稿。
クラシックレコードの世界(ミュージックバード)などの番組でも活躍。
五味康祐のオーディオで聴くレコードコンサート(練馬区文化振興協会)講師。
ウィーン楽友協会会員
ベーレンプラッテ
店主やスタッフたちが、直接ヨーロッパで買い付けをした良質なクラシックレコードのみ扱う専門店。
また、店舗でも使用している店主たちが厳選したレコードケア用品(クリーニングマシンやオリジナル内袋など)も販売中。
<公式SNS>
Facebook:ベーレンプラッテ
Related Posts
None found
