なぜ、「マシン」なのか?・新レコードクリーニング法(8)

なぜ私は、そこまでクリーニングマシンを重視するのか

前回の記事では、
レコード・クリーニングマシンを
「大事なコンポーネントの一員」
と書いた。

今回は、
なぜそう考えるのか。
そして、
本当にそこまで効果があるのか。
その点について、もう少し踏み込んで書いてみたい。

ノイズ低減 ― 誰にでもわかる、第一の効果

まず第一に挙げられるのは、ノイズの低減である。
これは特別な説明を必要としないだろう。

盤面のホコリ、溝に入り込んだ微細なゴミ、
長年の使用によって付着した皮脂や空気中の汚れ。
これらは再生時に、
パチパチというクリック音や、ザラザラというバックノイズとして現れる。

バキューム式クリーニングマシンを使えば、
こうしたノイズの原因を確実に除去できる。
洗浄と同時に、溝の奥に残った汚れや水分を吸引し、
完全な乾燥状態まで一気に仕上げられる

この点において、
クリーニングマシンの効果は非常にわかりやすく、
誰の耳にも共通して実感できるものだ。

マシンで洗浄前後のレコードの拡大図
誰の目にも明らか。

本質は、第二の効果にある

しかし、私がマシンを重視する理由は、
実はこのノイズ低減だけではない。

むしろ本質は、
音質いや聴こえてくる音楽そのものが明らかに変わる
という、第二の効果にある。

洗浄されたレコードを再生すると、
単に「静かになる」のではなく、
音が明るく、見通しが良くなる。

音場がさっと眼前に展開され、
楽器同士の距離感が整理され、
フレーズの立ち上がりと消え際が、はっきりと分かる。

その結果、
音楽の抑揚が非常にわかりやすくなり、
演奏が生き生きと感じられる。
その曲、その演奏家ならではの個性や表情が、
自然と浮かび上がってくる。

これは、
SN比や歪率といった測定値には、
おそらくほとんど現れない変化だと思う。
しかし、長年音楽と接してきた人々には、
この違いが決定的であることは、すぐに分かる。

現在当店でも常時使用中のブラン・ピュール・ネオ

新品LPを洗っても、効果は現れる

ここで、ぜひ触れておきたい体験がある。

実はこの「第二の効果」は、
中古盤に限った話ではない。
新品のLPを洗浄した場合でも、はっきりと現れる。

これは、初めて体験したとき、
正直に言って少なからず驚いた。

新品なのだから、汚れているはずがない。
そう思うのが普通だろう。
しかし実際には、
プレス工程で使用されるなにか、
製造後の保管・輸送中に付着する微細な成分などが、
盤面や溝に残っていることが少なくない。

それらはノイズとして目立つことは少ないが、
音の抜けや見通し、
情報の立ち上がりに、確実に影響を与えていると推測される。

新品LPを洗浄したあとに再生すると、
音場が一段すっきりと整理され、
音楽の流れが自然になる。
「音が良くなった」というよりも、
演奏が正しい姿で立ち上がる
という印象に近い。

この体験を重ねるうちに、
私は確信するようになった。

クリーニングとは、
汚れを落とすためだけの作業ではない。
盤に刻まれた情報を、
正しく読み取れる状態に整える行為

なのだと。

音を変えるのではなく、音楽を取り戻す

クリーニングマシンは、
音色を作り替える道具ではない。
派手な変化を演出する装置でもない。

余分なものを取り除き、
レコードというメディアが本来持っている情報量を、
きちんと引き出せる状態に戻す。

その結果として、
演奏のニュアンス、
ホールの空気感、
演奏家の集中力や呼吸が、
より自然に伝わってくるようになる。

だから私は、
クリーニングマシンを
「あったら便利なもの」ではなく、
LP再生に欠かすことのできない存在として捉えている。

音を変える前に、
盤とコンポを整える。
その最初の一歩が、
クリーニングなのだと思っている。

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